消化器科
肝臓について
肝嚢胞・肝血管腫
これらは、人間ドック・健康診断などで偶然発見されるものが多く、良性で有り心配有りません。
嚢胞は、水分の溜まった袋状のものです。
血管腫は、動脈と静脈が絡み合ったものです。嚢胞は稀に巨大化して治療を要する場合が有ります。

急性肝炎
原因
ほとんどの場合は、ウイルス性であるが、自己免疫性肝炎、胆道系結石によるもの、稀に薬剤が原因のこともある。
症状
全身倦怠感や黄疸で発見されることが多いが、初期は風邪と間違えられるので注意が必要である。
診断
GOT,GPT,γGTPが500以上に高値となる(いずれも正常値はおよそ50以下)。
治療
入院して安静治療が必要である。
*急性肝炎重症型
ほとんどの急性肝炎は入院治療で良くなりますが、稀に重症化し、時に劇症肝炎という予後不良に陥る場合があります。
慢性肝炎
原因
70%はC型肝炎ウイルス、20%はB型肝炎ウイルス、その他10%。
経過
- B型肝炎
急性肝炎からの10%弱が慢性化します、母子感染の場合は、20歳前後で肝炎を発症し、徐々に、肝炎の沈静化へ向かいHBe抗体が陽性化(セロコンバージョン)し、落ち着く場合が多いが、HBe抗原が陽性のままの慢性化した場合もある、最終的に肝硬変、肝臓癌に至るのは5%程度である。
肝臓癌の10%はB型肝炎である。
- C型肝炎
血液感染つまり小児期の予防接種の注射針が原因のことが多い。自覚症状はほとんど無く、70%が慢性化し、治ることは無い。
肝臓癌の80%はC型肝炎が原因である。
治療
専門化が進んでおり、総合病院・大学病院での治療になります
- B型肝炎
ペグインターフェロン、核酸アナログ製剤、肝庇護療法
- C型肝炎
インターフェロン+内服剤、内服剤のみ、肝庇護療法
肝硬変・肝臓癌
これらは、総合病院・大学病院での通院治療になりますので省略致します。
胆嚢について
胆嚢ポリープ
ほとんどが無症状で、人間ドックや健康診断で偶然発見されることが多く、ほとんどがコレステロールポリープで健康な人の、10%程度に認められます。

診断
腹部超音波(エコー)で診断します。
良性のコレステロールポリープの特徴は、白く、大きさ10mm未満で多発、桑の実状、有茎性などである。
10mmを越えるポリープは、胆嚢腺腫、胆嚢癌の可能性が有り精密検査が必要となります。
治療
コレステロールポリープであっても、胆石が合併していて症状がある場合は胆嚢摘出術の適応です。
腺腫や癌が疑われる、あるいは否定出来ない場合は胆嚢摘出術の適応です。
胆嚢腺筋腫症(アデノミオマトーシス)
ほとんどが無症状で人間ドックや健康診断で健康な人の1%以下に認められます。
診断
腹部超音波(エコー)で診断します。
胆嚢壁の肥厚や壁内の嚢胞化など伴います。精密検査として、超音波内視鏡、CT、MRIなどを行います。
治療
症状のある胆石合併例や胆嚢癌の合併が否定出来ない場合、胆嚢摘出術の適応です。
胆石症
胆汁が固形物になった疾患の総称で、存在部位によって、胆嚢結石、総胆管結石、肝内結石に分類されます。
その頻度は、胆嚢結石78%、総胆管結石21%、 肝内結石1%である。
胆石症は良性疾患であるが、胆石発作と共に、急性胆嚢炎・胆管炎を併発して、敗血症、播種性血管内凝固症候群(DIC)に移行することが有り注意が必要である。
症状
8割は無症状で、人間ドックや健診で腹部超音波検査で偶然発見されます。
典型例では、食後や夜間に突然の右肋骨下から胃の辺りの激痛で発症し、30分から2時間程度痛みが持続します。
背部痛や右肩甲骨付近の放散痛や悪心嘔吐を伴うこともあります。
痛みに加えて、発熱、黄疸が併発したときは急性胆嚢炎の合併しています。
診断
腹部超音波検査が最も分かり易いです。
精密検査としては、CT、MRI、超音波内視鏡など。
治療
- 胆嚢結石
- 無症状胆石
基本的には経過観察ですが、発がんと結石の関連は完全に否定出来ないため、年1回の腹部超音波検査を行いましょう。
結石の有症状化を未然に防ぐために、経口溶解剤の内服、体外衝撃波砕石術(ESWL)もある。
- 有症状胆石
胆石発作を繰り返す例は治療対象である。結石成分がコレステロール主体で胆嚢機能が正常ならば、経口内服やESWLの適応です。これらの治療適応が無ければ、胆嚢摘出術となります。今は、過去に腹部手術の既往が無ければ、腹部に小さな穴を開け、そこから腹腔鏡という特種な内視鏡を入れて、胆嚢を取り出す手術が一般的です。
傷が小さいので、退院も早く、回復も早く経過良好です。
- 総胆管結石
黄疸が無い場合は、結石除去。
- 内視鏡的に十二指腸乳頭切開し結石排出
- ESWL
- 外科手術
黄疸がある場合(胆管系の胆汁の強制排出:ドレナージが最優先される)
- 内視鏡的逆行性胆管ドレナージERBD
- 内視鏡的経鼻胆管ドレナージENBD
- 経皮経肝胆道ドレナージPTCD
- 経皮経肝胆嚢ドレナージPTGBD
これらのいずれかの緊急的処置で効果が有った時点で結石除去。
- 肝内結石
- 肝臓の一部切除
- 経皮経肝胆道鏡下に電気水圧式結石破砕(EHL)
- 十二指腸乳頭からEHLやバスケットカテーテルによる破砕
胆道癌
胆道癌は、胆嚢癌、胆管癌、乳頭部癌に分類されますが、これらは、総合病院・大学病院での入院治療になりますので省略致します。
膵臓について
急性膵炎
急性膵炎は、浮腫性膵炎と壊死性膵炎に分類。
膵炎の80〜90%は浮腫性膵炎で、特殊な治療をせず軽快するが、10〜20%は壊死性膵炎で、その死亡率は30〜40%に達する。特に細菌感染が合併した感染性膵壊死では死亡率が30〜40%と極めて高い。

症状
上腹部の急性腹痛発作と圧痛
稀に腹痛の無い急性膵炎(無痛性急性膵炎)があり、ショックや意識障害が主症状で致死的な膵炎であり、多くは死後の司法解剖で初めて診断される。
診断
血中・尿中の膵酵素(アミラーゼ・リパーゼ)の上昇、腹部超音波、CT、MRIなど。
治療
入院して、絶食による膵臓の安静、点滴治療、除痛。
慢性膵炎
男女比は3:1で、男女ともに30代から増加し始め、50歳代にピーク。
飲酒と深い関係があり、患者全体の65%がアルコール性、原因不明の特発性が18%。男性はアルコールの比率が70%と高く、女性は特発性が45%。
症例の60%が膵管内に、膵石と呼ばれる結石を伴う。一般に初回の腹痛発作から5〜10年の経過で膵石が出現する。
アルコール性膵炎では、非アルコール性に比べて膵石や糖尿の合併が多い。
症状
55%が腹痛を有し、35%に糖尿病、10%に消化吸収障害(下痢)。
腹痛の65%が上腹部痛、20%が背部痛。
無症状の場合もあり、糖尿病や膵石で発見される。
診断
血中・尿中の膵酵素(アミラーゼ・リパーゼ)の上昇、腹部超音波、CT、MRIなど
治療
禁酒、胃酸分泌を促進するカフェイン、炭酸、香辛料などの制限。過労、睡眠不足やストレスを避ける。
内服治療 時に点滴治療。
膵臓癌
総合病院・大学病院での入院治療になりますので省略致します。